5日(金)
テント暮らしも慣れてきた。寝床の片づけ、会場の設営なども手際よい。「民宿・県庁前」という表札でもつけようか、などと冗談を交わす。
近くのコンビニで買った新聞に目を通す。ハンスト会場のようすは紙面で毎日、大きく取り上げられている。この日も朝10時ごろには多くの人が激励に訪れた。オンライン署名も含め署名数は2万を超えた。賛同の輪が急速に広がっているのが実感できる。
大きなニュースが飛び込んできた。糸満で戦没者8体の遺骨が発見された。その遺骨は全身がそのままの状態で見つかった。子ども2体の遺骨もある。発掘したのは写真家の浜田哲二、律子さん夫妻。具志堅さん同様、20年近く遺骨収集に取り組んでいる。「遺族の多くは遺骨が戻ってくることを諦めていない」と浜田さん。同じ日の新聞には糸満の与座(よざ)でも遺骨2体が発掘されたとの記事。75年経った今も沖縄では戦争が生々しく甦ってくるのだ。
「重機で土を動かせば、このような状態で発掘されない。しかも埋まっていた壕は地下10m以上。表土だけ取ればその下に遺骨はないというのが間違いであることが、これでわかります」。具志堅さんは浜田さんから受け取った写真を手に何度も訪れる人に説明していた。爆撃で避難壕の入り口がふさがれ、多くの人が生き埋めになったはずだという。その壕は未だ発見されぬまま地下深くに数多くある。
この日も具志堅さんはマイクで県庁に向かい切々と訴えた。「助けてください。遺骨を助けてください。デニー知事、遺族の声を聞いてください」
激励に来てもいいはずの玉城デニー知事が顔を見せない。ハンスト支援の主催者は「明日、知事が来なければ来週またハンストを行う」と決めた。署名活動も引き続き行おうとなった。
米軍の北部訓練場のある高江でも宮城秋乃さん(蝶類研究者)が、ゲート前でひとりでハンストを行っているという。北海道でも具志堅さんに連帯し戸外でハンストを続けているという。寒いだろうに。
毎日、心強いニュースばかりが飛び込んでくる。ハンスト最後の夜。空腹感にすっかり慣れ、昼の興奮を引きずりながら眠りに入った。
6日(土)
ハンスト6日目になるが、具志堅さんはほかの3人よりも元気がいい。激励に来る人、メディアの取材にも丁寧に対応している。カメラの前ではその先にいるはずの県内外の沖縄戦遺族に語り掛けた。「あなたのお父さん、おじいさん、お兄さんが、もしかしたら辺野古の海に投げ入れられるかもしれません」
9時半ごろ、玉城デニー知事が私服で突然現れた。具志堅さんの説明に黙って耳を傾ける。「知事や担当の職員だけで決めず、遺族の気持ちを一番に施策に反映すべき。専門家も交えて協議してほしい」。玉城デニー知事「土砂採取はウチナ―ンチュの心情として許してはならない。法律的にできるかできないか、方策を今、一生懸命考えている」。小学5年の喜久里波美(11)さんは知事の目を真っすぐ見ながら訴えた。「小さい子からお年寄りまでが戦争で亡くなった。その土で海を埋めるのは反対。亡くなった人がずっと苦しむ」
午後の集会には200人以上が集まった。90歳前後の遺族が次々と涙ながらに地上戦の経験を語った。「父の遺骨は見つかっていない。お墓には石が納められている」(平山千代子さん 80歳)、「遺骨の混じった土を埋め立てに使うと聞いて涙が出た。言葉も出ない」(豊田肇さん 92歳)。
県庁に向かい具志堅さんが最後の声を上げた。「世の中に間違っているとはっきり言えることは少ないが、これは絶対間違っていると言える。デニー知事、遺族の声を聞いてください。助けてください」
オンライン署名648筆を集めやってきた若い女性が語った。「具志堅さんが命がけで訴えているのに、これしかできなくて」
オール沖縄の抗議文が読み上げられた。具志堅さんともども今後も運動を継続していくことを発表した。
遺骨が混じる土砂を戦争基地建設に使う政府の無慈悲な計画を国内外の多くの人が知った。「ガマフヤー」ひとりの行動が、ウチナ―ンチュだけでなく国内外の人を揺り動かしたのだ。法律はどうであれ、人としてやってはならないことだと。
きょう現在までに搬出されたダンプの数と土砂量、全体との割合
これらの数値はあくまでもダンプの台数から推計した参考値です。
2018年12月から2020年12月末までのダンプの数は302,705台(全体との割合は3.746%)
6日(土) | 8日(月) | 9日(火) | 10日(水) | 11 日(木) | 12日(金) | |
安和 | 662(3) | 925(3) | 806(3) | 918(4) | 875(4) | 718(5) |
塩川 | 0 | 706(5) | 712(5) | 711(5) | 893(2) | 261(2) |
現在までのダンプの総数 | 土砂量※① | 体積に換算 ※② | 全体との割合 ※③ |
354,132 台 | 1,770,660 t | 885,330 ㎥ | 4.383 % |
※① ダンプ1台あたりの積載量を平均5トンとして計算
※② 土砂の比重を2と仮定し計算
※③ 計画されている全体の埋め立て土砂量(20,200,000㎥)に対する割合月
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